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弦をはじいて等分割と音のハーモニーを生みだす

ギター, 三味線, バイオリンなどの弦をはじくと, 弦が次の図のように振動して音が鳴ります. (振れ幅を大げさに描いてある.他の図も同様)

@

次に, 弦のちょうどまん中あたりを, 指で軽く触れながら, 別の手で弦をはじきます. 「軽く触れる」のであって, 指で弦を下の板まで押さえつけるのではありません. 指で軽く触れている位置を少しずつずらしていくと, 音がよくひびく位置を見つけられます. 音は小さいけれどきれいにひびくはずです. このときの位置が弦をちょうど 2等分する位置です. また, そのとき鳴る音は, @のときの音の"1オクターブ高い音"と呼ばれています. 振動の様子は次の図です.

A

弦は@でなければAのように振動しやすいわけで, ちょうど2等分の位置に, 弦がほとんど振動しない"節"ができるのです. 軽く振れた指はAのような振動を作り出すための手助けをしているだけなので, 音がひびきはじめたら, 触れていた指をはなしても同じ音がひびきつづきます.

こうして, 耳だけを頼りにして, 弦の長さを 2等分する位置と 1オクターブ高い音を両方同時に見つけだすことができます. Aの音が@の音より1オクターブ高い音であることを, 音楽の得意な人に判定してもらう必要はありません. こうして生まれた音を「1オクターブ高い音」ということに決めたと言ってもよいのですから.

同じように, 弦を 3等分する 2ヵ所の一方のあたりを指で軽く触れながら, 別の手で弦をはじいて, よくひびく所を見つけると, そこがちょうど弦を 3等分する位置です. 4等分の場合は, 4等分する 3ヵ所のうち弦の両端に近いどちらかのあたりを触れながら, よくひびくところをさがします. このようにしてできる弦の振動のようすを 3等分から 8等分の場合まで示します.

音はどんどん高くなっていきます. @のときの音の高さをかりにドとすると, Aは1オクターブ高いド, 以下順に, ソ, ド, ミ, ソ, シ♭, ド と高くなってゆきます. このように「等分点を軽く触れながら弦をはじく方法」で正確な音程がつくれるので, この方法は弦楽器の調律に使われています. 実際の弦の振動を見ても上の図のようには見えませんが, 等分点の位置に"節"があるのは事実です. すべて, 弦にとって振動が起こりやすい形なのです. 自然のはたらきは, しばしば, 数学的な形を, 無言で, シンプルに, 美しく, 表現してくれています.

弦の振動が空気の振動として耳まで伝わり人間が音として聞くのですが, その振動数/秒は, @の場合を基準にすると, A以降順に, 2倍, 3倍, 4倍, ・・・・ となってゆきます. 人間の耳は, 振動数が2倍, 3倍, 4倍, ・・・・ となるような音たちの組合せに調和を感じるようにできていて, これらの音たちから音楽でつかう音を選びとっていったのでしょう.