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最終更新2003/05/26
第1回参加者の広がりのある関心を受けとめて, やや幅広い問題提起に適したテーマとして「ピタゴラス派にとっての数, 音, 形」とした。
2500年ほど昔のピタゴラス派が示した, 数, 音楽, 天の星々等への驚きと洞察は, 第1回参加者の関心や感覚にも直結していると, 私は思う。
ピタゴラス派だけが重要なわけではもちろんないが, 的を小さくして議論を深めるには, 良いだろう。
音高と弦長の関係は, ギリシャより古くバビロニアで知られていたが, ピタゴラスはそこに何を洞察したのか ?
"音"は, 日常の物音であるとともに, この宇宙の働きの現れである。その"音"の調和が, 弦長の"数"で律せられている。"数"とは宇宙(cosmos)を律し調和を与える働きである。
古代中国, 孔子も愛した古琴の響き。それは, ピュタゴラス音律と原理的に同じ三分損益法と, ハーモニクス(今もギターの調弦に使われている)の節位置をシンメトリックに選ぶ音律, の合成だったらしい。想像するだけで美しい響きである。
そして, 荘子の, 天籟, 地籟, 人籟(天, 地, 人の音楽)。
宇宙を律する"数"にふさわしいのは 1, 2, 3 ・・・・ などの(正の)整数だけである。(0 も 負数もギリシャにはなかった) 分数は, 日常の計算には役立つが, 本当の"数"ではない。日用品としての分数, たとえば, 2/3 に対して, 本当の"数"の世界では, 比 2:3 を論ずればよい。
宇宙(cosmos)の調和は, "数"すなわち整数である, と言い放ったピタゴラス派が, だからこそ, 整数比で表せない比, 今で言う無理数を発見してしまう。