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講座「アートとしての数学」第16回(2004/7/8)メモ

またりさまの数学

「またりさま」については, 作曲者の三輪さんによるまたりさま逆シミュレーション音楽を, また, その数学的構造については数の世界の"またりさま"をごらんください

はじめに, 三輪さんの新曲「8人の僧侶のためのまたりさまの双子」をパソコン音源で聞いた。これは, 前回(6/18), 私が紹介したまたりさまの「双子音列」を, 和音の音列に変換して作られた曲で,ドイツのケルン市庁舎のカリヨンで , この 7月の毎木曜日に演奏されている。変換規則を与えた以外には, その和音には, まったく人間の作為の余地はないはずだが, 意外に私の耳には聞きやすい響きであると感じた。

その後, 紙と鉛筆による「紙上またりさま」実習。鈴を 0, カスタネットを 1として, またりさまのルールでつづく音を, 0 と 1 の数列として書いてゆく。初期状態を変えるとどうなるか, 8人を, 2人, 3人, 4人, 5人, 6人, 7人, ・・・ と変えるとどうなるか, いろいろ試した。16人またりの音列周期255まで見つけた人がいた。

この手作業は, ルールさえわかれば小学生でもできると思うが, 立派に数学的発見を可能にする。「手作業の数学」は, 専門知識をじっくり学ぶひまのない素人が, それでも, 自分流に数学に切りこみ, 数学を自分の道具としてゆくための方法のひとつだろう。そして, その「手作業の数学」の経験は, いつか, 少しでも数学の理論を学ぼうとするとき, 具体物のイメージを呼び起こし, 理論をとらえやすくしてくれるだろう。

次回は, 「紙上またりさま」の経験の上で, 対称性や周期性を, 数式でどうあつかうかを紹介したい。