"数のはじまり"のトップヘ / Haniu files のトップヘ

2 をひとまとめにして数える(素朴2進法)

物を数えるとき, 2個ずつをひとまとめにしながら, 2, 4, 6, 8, ・・・・・・ と数えることがある.

世界各地の原住民文化には, 数詞(数専用の言葉)として 1 と 2 だけしか持たない例が多く知られている. その場合, 3 を"1 と 2", 4 を"2 と 2", 5 を"2 と 2 と 1" ・・・・・ のように表現する事例も多く報告されている. 1例のみ記す.

トレス海峡(オーストラリアとニューギニアの間の海峡)の西部諸族の間で, ハッドンは次の事実を見出した.
1 = urapun
2 = okosa
3 = okosa urapun
4 = okosa okosa
5 = okosa okosa urapun
それ以上は ras「たくさん」というと云っている.
(レヴィ・ブリュル「未開社会の思惟」岩波文庫.上p.241)

注 : これは100年ほど前の調査データ. 小林功長「数詞 その誕生と変遷」(星林社)には, オーストラリア原住民について同種の例が多数紹介されている.

このように, 2 をひとまとめにして, より多い個数を表しているが, 十進法は十をひとまとめにしてより大きい数を表現するし, 12進法, 60進法などもある. 諸言語を調べると, 3進法, 4進法などの名残りも見つけられる. 一定数を一まとめにして, それを新たな単位として, より大きい数の表現を作る. この表現方法の最も素朴な形が, 上の例のような, 2をひとまとめとする表現である. 現代のコンピューターで使われている 二進法も 2をひとまとめにして桁を作ってゆく.

さて, 「2一まとめにする」とは, 「2 を 1 にする」と言っているわけでおもしろい. この 2 はもっと小さい 1 がくりかえされて 2 となったのだが,その 2 全体はまた 1 として捉えられている. ここに, 1 の 2面, すなわち, 個としての 1 と全体としての 1 という 2面がよく見えている. この 2面については, 双数(両数)についてでも書いた. 日本語で表れる例. 全体としての 1:「世界はひとつ」「心をひとつにする」. 個としての 1 :「ひとりぼっち」「唯一」.こうした例を英語も含めて全体の1と個の1に書いた.

十進法では, 個としての一からはじまって十にいたると, 十の全体をひとまとめにして, それを新たな個(単位)と見て, 二十(=2つの十), 三十(=3つの十),・・・・ と数えてゆく. 十は, 一まとめにする全体の役と, 二十, 三十を数えてゆくための単位=個としての役を両方になわされている. さらに, 十という単位(個としての一)を十個集めた全体を百として, それを単位としてより大きい個数を数え・・・・・・ をくりかえし, 箱を何重もの入れ子にするようにして, 千, 万, ・・・・が作られてゆく.

また, かけざんとは, たとえば, 2×3 は, 2個ひとまとめの物が3組あるときの総数を求めることである. ここでも, ある一定数全体を新たな個=単位としてより大きい個数を考える.

このように, 対象を全体としてひとまとめに見ることと, 対象を個から次々に見てゆくことの, 入れ子構造が, 数認識と計算の基礎を作っている.