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集合数と順序数

私たちが物を数えるのに使う数, 1, 2, 3, 4, 5, ・・・・・・ (自然数と言う)には, 主な使いみちが 2つある.

ひとつめは, 車が3台, 人が 7人, などのように, 物の集まりの個数を示すこと. 物の集まりを数学用語で"集合"というが, 集合をつくっている物の個数を示すための数を集合数という.

ふたつめとして, 5番目の人, 本の127ページ, など, ある物の順番を表すこと. 物の順番を表すための数を順序数という.

1, 2, 3, 4, 5,・・・・・・ は, 集合数と順序数の両方の役で使われている. 順序数の役だけなら, 「きのう, 今日, あす」であげた"順序を表す言葉"も果たしている. ただし, 「・・・ きのう, 今日, あす・・・」ならば日にちの順序だけだし, せいぜい 6,7日の順序までであるように, いずれも用法は限定されている. 他に, 1週間の曜日, 十二支, なども順序を表すし, 「い, ろ, は, に, ほ, ヘ, と, ・・・・・」や "a, b, c, d, e, ・・・・・" なども順序を表すのに使われることがある. 順番の決まった一組の言葉ならば, 何でも, 順序を表すのに使える.

集合数と順序数は実際には切り離せない. たとえば, 人数という集合数を数える時, ひとりずつを指さしながら, 1, 2, 3, 4, ・・・・ と言ってゆく. 「1, 2, 3, 4, ・・・・」という, あらかじめ順序の決められた言葉の列を言ってゆき, 最後の人で18ならば, 18人という人数(集合数)がわかる. つまり, 集合数を知るために, 順序数を使っている. ならば, 人数を数えるのに, 順序の決まった言葉の列「いろはにほヘと ・・・・ 」を使ってもまったく差し支えない. 18人ならば, 「いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ」の「そ」で数え終わるから人数は「そ人」となる. バスのトイレ休憩の後, バスガイドさんが, 人数確認のため「いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ. ハイ, "そ人"全員いますね」でまったく問題ない. そのバス内で「いろは」が数として共用されていれば, "そ人"の意味が皆にすぐ伝わる. 結論 ; 順序の決められた言葉の列は, すべて, 物を数える数(自然数)になれる.

「いろは」を数に使うのも趣の変化があってよいが, 47個で終わることが難点である. 順序の決められた言葉の列として何を採用してもよいのだが, 何にしても, 限りない個数を表してゆくには, 「順序つけられた無限の言葉の列」がいる. 無限の言葉の列をつくりだす工夫のひとつが, 私たちの使う十進法である.

2をひとまとめにする(素朴二進法)」で触れた, 最も簡単な数体系の数詞, 1 と 2 は, 集合数として, すなわち物の個数として使われていると思う. 一方, 「体の諸部分で数える方法」で紹介した順序を決められた体の部位は, 順序数的に使われていると思う. 数詞が, 3, 4, ・・・ 10,・・・・ と増えてゆくときに, 数詞よりも数多く用意されていた「順序づけられた体の部位名」が取り入れられていったこともあったと思う.